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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 143,455 characters · 290 screens

Aozora Bunko

四

お由はこれだけ言うのが精一杯でした。平次の問いが途切れると、吉三郎の死骸に獅噛みつくように、時々は声を立てて泣いております。

四

「親分、河豚汁じゃ十手捕縄にも及ばないじゃありませんか」

吉三郎の家を出ると、ガラッ八はもう天下泰平の顔になっているのでした。

「手前はそう思うのか」

「だって親分」

「だから幾年経っても、大物は挙がらねえのさ」

銭形平次は八五郎の鈍骨を愍むともなく、こう言うのでした。

「ヘエ――、すると、何か変なことでもあるんで?」

「その辺にいる町内の人達に、今朝吉三郎の家へ来た、二人連れの人相を訊くがいい、その辺が手繰りどころだ」

「ヘエ――」

ガラッ八は吉三郎の家の裏口へ廻りましたが、やがて、狐につままれたような顔をして戻って来た。

「どうした、八?」

「変ですぜ、親分。今朝ここへやって来て、仏様の懐までかき廻して行ったのは、三十前後の凄い年増と、四十恰好の浪人者らしい男だそうですよ」

「それ見るがいい」

「吉三郎夫妻とはよっぽど昵懇の様子で、時々この家へ来るそうですよ」

「所、名前は?」

「そいつは解らねえ、――お由を締め上げてみましょうか」

「無駄だよ、止すがいい。