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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十三)青い帯

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(十三)青い帯 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 114,244 characters · 231 screens

Aozora Bunko

「俺にも分らない。とにかくお秀の家へもう一度行ってみるんだ」

平次と八五郎がすぐ向うの家へ行った時は、もうすっかり夜更けになって、お秀の家も締めております。

叩き起すまでもなく、声を掛けただけでお秀は開けてくれました。傾きかけた月明りを浴びて、青白くて上品なお秀の顔は、本当に紫陽花のような哀れ深い姿です。

「ちょいと二階を見せて貰いたいが――」

平次はさり気なく梯子を踏んでおります。

「どうぞ」

手燭を持って、お秀は案内しました。六畳と八畳の二た間つづき、その手前に長四畳があって、奥にはまだ、一と間くらいありそうな作りです。

「梯子はこれ一つしかないのかな」

平次はよく拭き込んだ廊下から、広い梯子段を見おろしました。

「不用心だからもう一つあるといいと言いますが――」

お秀は静かな調子です。

「隣の部屋は?――昨夕三味線を取りに行ったというのはここだね」

「え」

唐紙を開けると、そこは三畳の化粧の間で、行止まりの壁が一切の手掛りを封じております。

「大層いい月だな――ここから花火を眺めながら一杯やりたいな、八」

平次はそんなことを言いながら、雨戸を開けて外を見ました。