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さんごくし
三国志(一)
吉川 英治
Read 三国志(一) (さんごくし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 309,839 characters · 622 screens
――陶謙に征伐されて、やむなく仕えてみたが、ただの仕官というやつは、薄給で窮屈で、兵隊どもが、不平勝ちに思うのも仕方がない。……どうだ、いっそのこと、また以前の黄色い巾を髪につけて、自由の野に暴れ出そうか」
「――といっても、今となっちゃあ遅蒔でしょう」
「なあに、金さえあればいいのだ。幸い、俺たちの護衛して来た老いぼれの一族は、金もだいぶ持っているらしいし、百輛の車に、家財を積んでいる。こいつを横奪りして山寨へ立て籠るんだ」
こんな悪謀がささやかれているとは知らず、曹嵩は、肥えた愛妾と共に、寺の一室でよく眠っていた。
夜も三更に近い頃――
突然、寺のまわりで、喊声がわきあがったので、老父の隣の部屋に寝ていた曹操の実弟の曹徳が、
「やっ。何事だろう」と、寝衣のまま、廊へ飛び出したところを、物もいわず、張※(「門<豈」、第3水準1-93-55)が剣をふりかざして斬り殺してしまった。
――ぎゃっッ。
という悲鳴が、方々で聞えた。曹嵩のお妾は、
「ひッ、ひと殺しっ」
と絶叫しながら、方丈の墻をこえて逃げようとしたが、肥っているので転げ落ちたところを、張※(「門<豈」