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さんごくし
三国志(一)
吉川 英治
Read 三国志(一) (さんごくし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 309,839 characters · 622 screens
「はっ……」
「馬陵山の東西に兵を伏せ、敵をひき寄せ、円陣のうちにとらえて、思う存分、殲滅してくれるのだ。わかったか」
「わかりました」
「どうだ、諸君」
「ご名策です」
幕僚は、その場で皆、喪章をつけた。――そして将軍旗の竿頭にも、弔章が附せられた。
――曹操死す。
の声が伝わった。まことしやかに濮陽にまで聞えて来た。呂布は耳にすると、
「しめた、おれの強敵は、これで除かれた」
と膝を叩き、念のため、探りを放って確かめると、喪の敵陣は、枯野のように、寂として声もないという。
馬陵山の葬儀日を狙って、呂布は濮陽城を出て、一挙に敵を葬り尽そうとした。ところがなんぞ計らん。それは呂布を拉して冥途へ送らんとする偽りの葬列だった。
起伏する丘陵一帯の陰から、たちまち鳴り起った陣鼓鑼声は、完全に呂布軍をたたきのめした。
呂布は、命からがら逃げた。一万に近い犠牲と面目を馬陵山に捨てて逃げた。――以来、それにこりごりして、濮陽を堅く守り、容易にその城から出なかった。
牛と「いなご」
一
穴を出ない虎は狩れない。
曹操は、あらゆる策をめぐらして、呂布へ挑んだが、
「もうその策には乗らない」