Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

Read 三国志(一) (さんごくし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 309,839 characters · 622 screens

Aozora Bunko

楊柳の幹より大きな肩幅を、後ろ向きに見ていただけであったが、立上がったのを見ると、実に見上げるばかりの偉丈夫であった。突然、山が立ったように見えた。

「……私ですか」

劉備はさらに改めて、その人を見なおした。

「うむ。貴公よりほかに、もう誰もいないじゃないか」

黒漆の髯の中で、牡丹のような口を開いて笑った。

声も年頃も、劉備と幾つも違うまいと思われたが、偉丈夫は、髪から腮まで、隙間もないように艶々しい髯をたくわえていた。

「――読みました」

劉備の答えは寡言だった。

「どう読んだな、貴公は」と、彼の問いは深刻で、その眼は、烱々として鋭い。

「さあ?」

「まだ考えておるのか。あんなに長い間、高札と睨み合っていながら」

「ここで語るのを好みません」

「おもしろい」

偉丈夫は、酒売りへ、銭と酒杯を渡して、ずかずかと、劉備のそばへ寄ってきた。そして劉備の口真似しながら、

「ここで語るのを好みません……いや愉快だ。その言葉に、おれは真実を聴く。さ、何処かへ行こう」

劉備は困ったが、「とにかく歩きましょう。ここは人目の多い市ですから」

「よし歩こう」

偉丈夫は、闊歩した。劉備は並行してゆくのに骨が折れた。