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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens

Aozora Bunko

「そうなりゃ、しめたものだぜ。師匠上ったりで、いよいよ裾をひろげらあ」

と、いった時、泥溝板に音がして、一人の若い衆が、下駄を飛ばした、片足をあげて、ちんちんもがもがしながら、大きい声で

「とっ、とっと――猫、転んで、にゃんと鳴く。師匠が転べば、金になる――」

板の間で、それを見た一人が

「庄公、来やあがった」

と、呟いた。庄吉は、入ろうとして、小藤次に気がつくと

「お帰んなさいまし」

と、丁寧に、上り口へ手をついた。

「上れ」

「今、酒買うところだ」

「丁度、師匠の帰りに、酌ってことになるかの」

小藤次が

「庄、どうだ、景気は?」

「へへっ、頭は木櫛ばかり、懐中は、びた銭、御倹約令で、掏摸は、上ったりでさあ」

「押込なんぞしたら?」

「押込?――押込は、若旦那、泥棒でさあ。品の悪い。掏摸は職人だけど――」

「はははは、そうか――庄吉、いい腕だそうなが、武士のものを掏ったことがあるか」

「御武家衆にゃあ、金目のものが少くってねえ」

「何うだ、一両、はずむが、鮮やかなところを見せてくれんか?」

小藤次が、こういって、往来を見た時、一人の若侍が、本を読みながら、通りすぎようとしていた。