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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens

Aozora Bunko

「その間、小唄でも――」

と、云って、益満は、柱にかけてある三味線を取りに立上った。

「こりゃ又、異な姿だのう。何んと致した」

名越左源太は、襖を開けて入ると同時に、坐りもしないで、笑った。益満は

「遅参致しました」

と、両手をついて、挨拶した。部屋は、茶室造りであったが、庭は、石一つない、粗末なものであった。

「外のことでないが、大殿が、御帰国になったに就いて、国許の同志は、君側の奸者共を一挙に、殲滅させようと、計画しておる。それと一緒に、江戸では――いろいろと、論も出たが、久光殿をばじゃな――この君、在ればこそ、じゃで、勿体ないが――」

左源太は、斬る真似をした。

「はっ」

「それで、何うじゃ、その役を勤めるか、但しは又、何か、よい工夫が、あるか? その談合のために、呼んだが、益満――国許では、赤山靱負殿も、このことには御賛成であるし、益満なら心丈夫だとの仰せもある。一つ、勤めてくれ。外に、この大役を安心して任せる者がない。恩賞としては、何れ、斉彬公御世継の上は、靱負殿よりの取計らいにて、三百石には取立てて得させる」

「有難く存じまする」

「早速承引してくれて、わしも嬉しい」