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しょうせつ ほととぎす

小説 不如帰 

徳冨 蘆花

Read 小説 不如帰 (しょうせつ ほととぎす) by 徳冨 蘆花 (とくとみろか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 129,742 characters · 256 screens

Aozora Bunko

今度もかけちがいましてお目にかからんけりゃ、わが輩は、だ、長駆渤海湾に乗り込んで、太沽の砲台に砲丸の一つもお見舞い申さんと、堪忍袋がたまらん」

「それこそ袋のなかに入るも同然、帰路を絶たれたらどうです?」まじめに横槍を入るるは候補生の某なり。

「何、帰路を絶つ? 望む所だ。しかし悲しいかな君の北洋艦隊はそれほど敏捷にあらずだ。あえてけちをつけるわけじゃないが、今度も見参はちとおぼつかないね。支那人の気の長いには実に閉口する」

おりから靴音の近づきて、たけ高き一少尉入り口に立ちたり。

短小少尉はふり仰ぎ「おお航海士、どうだい、なんにも見えんか」

「月ばかりだ。点検が済んだら、すべからく寝て鋭気を養うべしだ」言いつつ菓子皿に残れるカステーラの一片を頬ばり「むむ、少し……甲板に出ておると……腹が減るには驚く。――従卒、菓子を持って来い」

「君も随分食うね」と赤きシャツを着たる一少尉は微笑みつ。

「借問す君はどうだ。菓子を食って老人組を罵倒するは、けだしわが輩士官次室の英雄の特権じゃないか。――どうだい、諸君、兵はみんな明日を待ちわびて、目がさえて困るといってるぞ。