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しょうせつ ほととぎす

小説 不如帰 

徳冨 蘆花

Read 小説 不如帰 (しょうせつ ほととぎす) by 徳冨 蘆花 (とくとみろか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 129,742 characters · 256 screens

Aozora Bunko

零時二十分、武男は、分隊長の命を帯び、副艦長に打ち合わすべき事ありて、前艦橋に上れば、わが艦隊はすでに単縦陣を形づくり、約四千メートルを隔てて第一遊撃隊の四艦はまっ先に進み、本隊の六艦はわが松島を先登としてこれにつづき、赤城西京丸は本隊の左舷に沿うてしたがう。

仰ぎ見る大檣の上高く戦闘旗は碧空に羽たたき、煙突の煙まっ黒にまき上り、舳は海を劈いて白波高く両舷にわきぬ。将校あるいは双眼鏡をあげ、あるいは長剣の柄を握りて艦橋の風に向かいつつあり。

はるかに北方の海上を望めば、さきに水天の間に一髪の浮かめるがごとく見えし煙は、一分一分に肥え来たりて、敵の艦隊さながら海中よりわき出づるごとく、煙まず見え、ついで針大の檣ほの見え、煙突見え、艦体見え、檣頭の旗影また点々として見え来たりぬ。ひときわすぐれて目立ちたる定遠鎮遠相連んで中軍を固め、経遠至遠広甲済遠は左翼、来遠靖遠超勇揚威は右翼を固む。西に当たってさらに煙の見ゆるは、平遠広丙鎮東鎮南及び六隻の水雷艇なり。

敵は単横陣を張り、我艦隊は単縦陣をとって、敵の中央をさして丁字形に進みしが、あたかも敵陣を距る一万メートルの所に至りて、わが先鋒隊はとっさに針路を左に転じて、敵の右翼をさしてまっしぐらに進みつ。