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しょうせつ ほととぎす
小説 不如帰
徳冨 蘆花
Read 小説 不如帰 (しょうせつ ほととぎす) by 徳冨 蘆花 (とくとみろか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 129,742 characters · 256 screens
「何をおっしゃるのです?」
「へへへへへ、華族で、金があれば、ばかでも嫁に行く、金がなけりゃどんなに慕っても唾もひッかけん、ね、これが当今の姫御前です。へへへへ、浪子さんなンざそんな事はないですがね」
浪子もさすがに血相変えてきっと千々岩をにらみたり。
「何をおっしゃるンです。失敬な。も一度武男の目前で言ってごらんなさい。失敬な。男らしく父に相談もせずに、無礼千万な艶書を吾にやったりなンぞ……もうこれから決して容赦はしませぬ」
「何ですと?」千々岩の額はまっ暗くなり来たり、唇をかんで、一歩二歩寄らんとす。
だしぬけにいななく声足下に起こりて、馬上の半身坂より上に見え来たりぬ。
「ハイハイハイッ。お邪魔でがあすよ。ハイハイハイッ」と馬上なる六十あまりの老爺、頬被りをとりながら、怪しげに二人のようすを見かえり見かえり行き過ぎたり。
千々岩は立ちたるままに、動かず。額の条はややのびて、結びたる唇のほとりに冷笑のみぞ浮かびたる。
「へへへへ、御迷惑ならお返しなさい」
「何をですか?」
「何が何をですか、おきらいなものを!」
「ありません」
「なぜないのです」
「汚らわしいものは焼きすててしまいました」