Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
Read 私本太平記(三) (しほんたいへいき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 222,108 characters · 446 screens
「では、新手の物見を放って、もいちど、仔細を窺わせてみるとしようか」
「それもよいが、こなたはこなた、かねて諜し合わせておいた通り、地の利を峠の上に占めて、切所難所に兵を伏せさせ、いつなりと慌てぬよう、ともあれ、布陣を先にしておく方が肝要であろうよ」
「いかにも」
それ行けと、馬はみな麓に隠した。一さんに徒歩軽装の早さで峠をのぼりつめる。
まもなく、東南は播磨灘から水島灘の碧を遠くのぞみ、北は佐用、揖保の山波を仰いでいた。高徳と五郎は二た手になり、兵を諸所に隠したり、物見を放ッて、ほぼ小半日、「ござんなれ」と、伏せていた。
峠は暮れた。夜になっては、なおさら何のうごきもない。
ただ折々には、有年方面の鯰峠をこえ、ここの船坂峠へ走って来る人影があった。物見から物見への伝令だろう。有年に宿営している敵の様子はその微動までが刻々、高徳と五郎の耳へつたわってくる。
「さては、輦輿が通るのは、いよいよ今日だな」
朝となった。
峠の上はもう明るい。権ノ五郎は、夜どおし伏せていた露まみれな体を起して、高徳が隠れている陣の方へ歩いて行った。
が、兵に訊くと、
「備後どのは、まだ彼方の木蔭で眠っておられます」