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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(三)酒屋火事

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(三)酒屋火事 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 146,725 characters · 298 screens

Aozora Bunko

見張りのガラッ八は、すっかりむくれております。

「今に磔柱を背負される野郎だ、好きなように暴れさせるがいい」

藤助も、平次の言葉には魂を冷しました。

「親分、そいつは情けねえ。あっしは正直者で、お主を殺す人間か、人間でないか、誰にでも訊いて下さい」

「訊かなくたっていい、手前の荷物を見せさえすりゃ」

「お安い御用だ、親分、――その押入の中にある柳行李と風呂敷があっしの世帯だ。憚りながら錦の小袖も、絹の褌もあるわけじゃねえ」

「よしよし、その風呂敷や行李は見たかねえ、俺はこの部屋に用事があるんだ」

手頃の薪を一本持って来た平次は、部屋の天井板を一枚一枚叩いておりましたが、やがて押入へもぐり込むと、新しく貼った壁張の紙を引っ剥がし、壁を少し叩き落し、十枚ばかりの小判を持って、埃だらけになって出て来ました。

「見ろ、藤助、御主人は百も持っちゃいねえのに、奉公人の手前は十両という大金を持っているじゃないか」

「親分、そいつは給金を貯めたんだ、やましい金じゃねえ」

「年に四両の給金を、そっくり二年半貯めたというのかい」

「少しは手なぐさみもしますよ、親分」

「まア、いい。とにかく、昨夜主人の殺されたことと、此家には小粒一つないことだけは確かなんだ。