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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 143,455 characters · 290 screens

Aozora Bunko

「手前の知ったことじゃねえ、黙っていろ」

叱りとばした平次の左手には、捕縄がバラリと捌かれます。

行灯の薄明りに照らされて、お留の姿は神々しくも美しいものでした。

が、その時――、

「親分、私を縛って下さい、娘に罪はない、――お柳を殺したのは、この私だ」

飛込んだのは親父の吉五郎、お留と平次の間に割って入ると、両手を後ろに廻して、観念の顔をあげるのです。

「あれ、父さん」

驚くお留。

「いや、止めるな、お留、――縁結びの話を聞いて、俺はカッとなって飛出した。――それはお前も知っての通りだ。あの晩、お糸の阿魔が稲荷様に来るに違えねえと思って、有馬屋の納戸から、匕首まで持出して用意したんだ。――有馬屋には重なる怨み、親父の治兵衛を一と思いに殺したんじゃ腹が癒えねえ。眼へ入れても痛くねえようなお糸を殺して、うんと思い知らせる心算だったんだ」

「…………」

吉五郎の言葉の予想外さ。お留も、平次も、金太もガラッ八もただ聴入るばかりです。

「狐格子で何か細工をしている若い娘、夜目にはお糸と思い込んだのも無理はあるめえ。後ろから一と思いに斬って、格子から新しい縁結びを引き千切って帰ったのはこの俺だ、――翌る朝、現場へつれて行かれて、死骸を見た時の驚きを察してくれ、お糸と思い込んで殺したのは、可哀相に乾物屋のお柳だ」