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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十三)青い帯

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(十三)青い帯 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 114,244 characters · 231 screens

Aozora Bunko

「親分」

ガラッ八の腕は鳴るのでした。

「八、止さないか」

「だって」

「そっと後を跟けろ。――ちょっかいを出すな」

「…………」

大きくうなずくと、ガラッ八はヒタヒタと曲者の後を追いました。

その報告を平次が受取ったのは、翌る日の朝でした。

「親分、お早う」

「昨夜は御苦労だったな、八」

平次は朝の膳を押しやって、上機嫌で八五郎を迎えるのでした。

「あの辻斬野郎の身許は分りましたよ」

膝行り寄って渋茶の茶碗を引寄せながら、こう振り仰いだ八五郎の鼻は少し蠢きます。

「そうだろうとも、逃げも隠れもする相手じゃなかったようだ」

「甲賀町の御家人、岩井銀之助様、二十五の辰年だ。腕は大したものじゃねエが、男がよくて、人柄も立派だ」

「それが昨夜斬りかけた相手か」

「そうですよ。禄高百五十石、何不足のねえ身分で、辻斬とは道楽すぎるじゃありませんか」

「あれは辻斬の本人じゃないよ、八」

「ヘエ――」

平次はけろりとしてそんなことを言うのです。

「いきなり親分へ斬りかけても?」

「辻斬なら御用聞と知って斬りかけるはずはない。お前は現に縄付を引いていたじゃないか」

「ヘエ――」

「それに、あんな腕じゃ三河町の酒村草之進を夜逃げさしたり、腕自慢の御家人を五人まで手玉に取るわけに行くまい」