Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠3

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠3 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 214.131 Zeichen · 423 Bildschirme

Aozora Bunko

背の低い方が答える。

「魚の跳ねる音ではなかったようだ」

「と言うてこの夜中に――」

「ともかく、あの音は礫の音。ことによると、薩州の方で誰かここを認めた奴があるかも知れぬ」

「油断はなり申さぬ」

薩州邸内の見取図を作っていた二人の武士は、櫓の上から前後左右を警戒すると、背の高いのが急に紙と筆を下へ投げ捨てるように差置いて、

「怪しい奴」

手裏剣を抜いて発矢と投げる。投げた方角は薩州邸の馬場から此邸の隔ての塀あたり。低い方の武士は下に伏せてあった龕燈を手早く持ち直してその方角に突きつけると、池の上を飛ぶように汀を走って女中部屋の方へ行く怪しの者。

二人の武士は高いところにいたから、怪しい者の影を龕燈の光に照しては見たけれど、大きな声を揚げて屋敷の中を騒がすべく遠慮するところがあったものらしい。それで、

「怪しい奴」

「取逃がしたか」

と火の見櫓の上で面を見合せて、空しく下の闇を立って見ていると、池のほとりで、

「何者だ!」

「呀!」

ざんぶと水の中へ落ち込んだような物の音。

「出合え、出合え、いま女中部屋へ曲者が入った、早く出合え」

ちょうどこの時、邸外を通り合せたのが白金に屯所を置く荘内藩の巡邏隊でした。