Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠3
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠3 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 214.131 Zeichen · 423 Bildschirme
これだけ言いかけたら、あとは小林師範役か誰かがバツを合せてくれるだろうと思っていたところが、小林はそれからなんとも言いませんでした。一座の者も黙っていましたから、老人は自身の言葉尻を持扱っていると列座の中から、
「則重……則重……則重ではないか」
と吃りながらこう言った者がありました。これはそそっかしいので通った市川という御蔵の係りでありました。まだ誰も剣呑がって国も言わなければ年代にも触ってみないうちに、早くもその銘を言ってしまったところはなるほど、そそっかし屋であり正直者であることがわかります。
「以てのほか」
平野老人は首を振って肯いませんでした。市川の言ったことを刎ねつけることによって、自分がもてあました言葉尻が立て直りました。
「則重ではござらぬ」
平野老人は首を振ったから、そそっかし屋の市川は一時、面を赤くしましたけれど、老人があんまり手厳しく刎ねつけたものですから、反抗の気味となって、
「そ、そ、そんならば、そんならば、老人のおめききは……」
と言って反問しました。焦き込むと吃る癖があるから、いつもならばおかしいのであるけれど、誰も笑いませんで、かえって市川に同情するような心持で、老人の返答を相待っているような者さえあります。