Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠4
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠4 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 264.133 Zeichen · 524 Bildschirme
米友が何故に遽かに真剣になって槍を構えたか、米友自身もそれは知ることができませんでした。ことにその通りの五里霧中にあって、鼻の先に現わるるものさえわからない時に、そこに何者かがあって米友を驚かせたものとすれば、それも不思議ではありませんか。
ただ米友の槍を構えたその形だけを見ていれば、例の運慶の刻んだ十二神将のような形が、さまざまに変化するのを認めます。十二神将が十二神将にとどまらず、二十八部衆にまで変化するのを認めます。
槍を挙げて、あ、と言って散指の形をして見せました。やや遠く離れて槍を抱えては摩醯首羅の形をして見せました。またそろそろと懸の槍を入れたその眼は、難陀竜王の眼のように光ります。「エエ」と言って飛び上る時は、雷神が下界を驚かすような形をして見せます。して見せるつもりではない、米友においては、実に容易ならぬ生死の覚悟が、眼にも面にも筋肉にも充ち満ちているのだが、相手が例の如法闇夜の中にあるから、離れて見れば一人相撲を取っているとしか見られません。ややあって、米友はものの五間ほど一散に飛び退りました。
飛び退って、槍を下段に構え直して、ヤ、ヤヤ、と言って、口から咄々と火を吐くような息を吐いて、もう一寸も進みませんでした。