Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠4
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠4 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 264.133 Zeichen · 524 Bildschirme
無教育な故にこの女は単純でありました。賤しい生れを自覚していたから、物事に思いやりがありました。今となってはその本質が、ひたひたと寄せて来るほかの慾望に圧倒されてしまいました。可憐な処女の面影が拭い消されて、人を魅するような笑顔がこれに代りました。お君は鏡にうつる自分の髪の黒いことを喜びました。その面の色の白いことが嬉しくて堪りませんでした。それから頭へ手をやるたんびに、わが腕の肉が張りきっていることに自分ながら胸を躍らせました。お君はこうして、その写真を見ながら髪を結っては、また写真を見比べるのでありました。おそらくはその姿を能登守に見せたいからではありません。ただこの場で今宵限りこの打掛を着て、この奥方の通りに片はずしに結って、ひとりでながめていることだけに、このわくわくと狂うような胸の血汐を押鎮めようとするに過ぎないらしいのであります。
お君は、どうやら自分の手で、それを本式の長髱の片はずしに結んでしまい、ばらふの長い笄でとめて、にっこりと媚めかしい色を湛えながら、例の奥方の写真を取り上げました。眉を払ってあの奥床しい堂上のぼうぼう眉を染めることだけは、奥方のそれと並ぶわけにはゆきませんけれども、お君はわざわざそんなことをしないでも、これで充分に満足しました。