Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠4
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠4 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 264.133 Zeichen · 524 Bildschirme
けれども竜之助は、眼を開いてその可憐な姿を見ようともしなければ、口を開いて、逃げろとも助けるとも言いませんでした。ただお銀様の一語一語を聞いているうちに、その面にみるみる沈痛の色が漲り渡るのみでありました。
「それでは、わたくしはこのまま御免を蒙りまする、いずれまた人を御挨拶に遣わしまする」
お銀様は愴惶としてこの部屋を立って行こうとした時に、竜之助がはじめて、
「お待ちなさい」
と言いました。
「はい」
お銀様は立ち止まりました。
「これからどこへおいでなさろうというのです」
「はい、有野村まで」
「有野村へ?……外は近来の大雪であるらしいのに」
「雪が降りましょうとも雨が降りましょうとも、わたくしは帰らずにはおられませぬ」
「外は雪である上に、駕籠も乗物もここにはあるまい」
「そんな物はどうでもよろしうござりまする、わたくしは逃げなければなりませぬ、帰らなければなりませぬ」
「駕籠も乗物もないのに、外へ出れば人通りもあるまい、道で吹雪に打たれて凍えて死ぬ……」
「たとえ凍えて死にましても、わたくしは……」
「そりゃ無分別」
「ああ、思慮も分別も、わたくしにはわかりませぬ、こうしておられませぬ、こうしてはおられませぬわいな」