Japanische Klassiker mit Furigana
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ひがんすぎまで
彼岸過迄
Lesen Sie 彼岸過迄 (ひがんすぎまで) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 195.333 Zeichen · 385 Bildschirme
二十一
――まあ試しに使って見て下さい。あなたの御家の――と云っちゃ余り変ですが、あなたの私事にででもいいから、ちょっと使って見て下さい」
「そんな事でもして見る気がありますか」
「あります」
「それじゃ、ことに依ると何か願って見るかも知れません。いつでも構いませんか」
「ええなるべく早い方が結構です」
敬太郎はこれで会見を切り上げて、朗らかな顔をして表へ出た。
二十一
穏やかな冬の日がまた二三日続いた。敬太郎は三階の室から、窓に入る空と樹と屋根瓦を眺めて、自然を橙色に暖ためるおとなしいこの日光が、あたかも自分のために世の中を照らしているような愉快を覚えた。彼はこの間の会見で、自分に都合の好い結果が、近い内にわが頭の上に落ちて来るものと固く信ずるようになった。そうしてその結果がどんな異様の形を装って、彼の前に現われるかを、彼は最も楽しんで待ち暮らした。彼が田口に依頼した仕事のうちには、普通の依頼者の申し出以上のものまで含んでいた。彼は一定の職業から生ずる義務を希望したばかりでなく、刺戟に充ちた一時性の用事をも田口から期待した。彼の性質として、もし成効の影が彼を掠めて閃めくならば、おそらく尋常の雑務とは切り離された特別の精彩を帯びたものが、卒然彼の前に投げ出されるのだろうぐらいに考えた。