Japanische Klassiker mit Furigana
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ひがんすぎまで
彼岸過迄
Lesen Sie 彼岸過迄 (ひがんすぎまで) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 195.333 Zeichen · 385 Bildschirme
十
僕はまあ安心だろうよと答えた。実際僕は安心したような心持だったのである。で、明る日は新橋へ見送りにも行かなかった。
十
約束の音信は至る所からあった。勘定すると大抵日に一本ぐらいの割になっている。その代り多くは旅先の画端書に二三行の文句を書き込んだ簡略なものに過ぎなかった。僕はその端書が着くたびに、まず安心したという顔つきをして、妻からよく笑われた。一度僕がこの様子なら大丈夫らしいね、どうも御前の予言の方が適中したらしいと云った時、妻は愛想もなく、当り前ですわ、三面記事や小説見たような事が、滅多にあってたまるもんですかと答えた。僕の妻は小説と三面記事とを同じ物のごとく見傚す女であった。そうして両方とも嘘と信じて疑わないほど浪漫斯に縁の遠い女であった。
端書に満足した僕は、彼の封筒入の書翰に接し出した時さらに眉を開いた。というのは、僕の恐れを抱いていた彼の手が、陰欝な色に巻紙を染めた痕迹が、そのどこにも見出せなかったからである。彼の状袋の中に巻き納めた文句が、彼の端書よりもいかに鮮かに、彼の変化した気分を示しているかは、実際それを読んで見ないと分らない。