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Japanische Klassiker mit Furigana

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ひがんすぎまで

彼岸過迄

夏目 漱石

Lesen Sie 彼岸過迄 (ひがんすぎまで) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 195.333 Zeichen · 385 Bildschirme

Aozora Bunko

三十三

千代子はとうとう鏡台の前に坐った。

「何に結おうかしら」

髪結は島田を勧めた。母も同じ意見であった。千代子は長い髪を背中に垂れたまま突然市さんと呼んだ。

「あなた何が好き」

「旦那様も島田が好きだときっとおっしゃいますよ」

僕はぎくりとした。千代子はまるで平気のように見えた。わざと僕の方をふり返って、「じゃ島田に結って見せたげましょうか」と笑った。「好いだろう」と答えた僕の声はいかにも鈍に聞こえた。

三十三

僕は千代子の髪のでき上らない先に二階へ上った。僕のような神経質なものが拘わって来ると、無関係の人の眼にはほとんど小供らしいと思われるような所作をあえてする。僕は中途で鏡台の傍を離れて、美くしい島田髷をいただく女が男から強奪する嘆賞の租税を免かれたつもりでいた。その時の僕はそれほどこの女の虚栄心に媚びる好意を有たなかったのである。

僕は自分で自分の事をかれこれ取り繕ろって好く聞えるように話したくない。しかし僕ごときものでも長火鉢の傍で起るこんな戦術よりはもう少し高尚な問題に頭を使い得るつもりでいる。ただそこまで引き摺り落された時、僕の弱点としてどうしても脱線する気になれないのである。