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Japanische Klassiker mit Furigana

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ひがんすぎまで

彼岸過迄

夏目 漱石

Lesen Sie 彼岸過迄 (ひがんすぎまで) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 195.333 Zeichen · 385 Bildschirme

Aozora Bunko

十

自分が罷めた経験も罷められた閲歴もないので、他の進退などはどうでも構わないような気がした。ただ話が理に落ちて面白くないという自覚だけあった。森本はそれと察したか、急に調子を易えて、世間話を快活に十分ほどした後で、「いやどうも御馳走でした。――とにかく田川さん若いうちの事ですよ、何をやるのも」と、あたかも自分が五十ぐらいの老人のようなことを云って帰って行った。

それから一週間ばかりの間、田川は落ちついて森本と話す機会を有たなかったが、二人共同じ下宿にいるのだから、朝か晩に彼の姿を認めない事はほとんど稀であった。顔を洗う所などで落ち合う時、敬太郎は彼の着ている黒襟の掛ったドテラが常に目についた。彼はまた襟開の広い新調の背広を着て、妙な洋杖を突いて、役所から帰るとよく出て行った。その洋杖が土間の瀬戸物製の傘入に入れてあると、ははあ先生今日は宅にいるなと思いながら敬太郎は常に下宿の門を出入した。するとその洋杖がちゃんと例の所に立ててあるのに、森本の姿が不意に見えなくなった。

十

一日二日はつい気がつかずに過ぎたが、五日目ぐらいになっても、まだ森本の影が見えないので、敬太郎はようやく不審の念を起し出した。