Japanische Klassiker mit Furigana
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ひがんすぎまで
彼岸過迄
Lesen Sie 彼岸過迄 (ひがんすぎまで) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 195.333 Zeichen · 385 Bildschirme
五
いくら思い出そうとしても思い出せないところをもって見ると、初から覚えなかったのだろう。これほど鋭敏に父を観察する能力を、小供の時から持っていた僕が、母に対する注意に欠けていたのも不思議である。人間が自分よりも余計に他を知りたがる癖のあるものだとすれば、僕の父は母よりもよほど他人らしく僕に見えていたのかも分らない。それを逆に云うと、母は観察に価しないほど僕に親しかったのである。――とにかく妹は死んだ。それからの僕は父に対しても母に対しても一人息子であった。父が死んで以後の今の僕は母に対しての一人息子である。
五
だから僕は母をできるだけ大事にしなければすまない。が、実際は同じ源因がかえって僕をわがままにしている。僕は去年学校を卒業してから今日まで、まだ就職という問題についてただの一日も頭を使った事がない。出た時の成績はむしろ好い方であった。席次を目安に人を採る今の習慣を利用しようと思えば、随分友達を羨ましがらせる位置に坐り込む機会もないではなかった。現に一度はある方面から人選の依託を受けた某教授に呼ばれて意向を聞かれた記憶さえ有っている。それだのに僕は動かなかった。