Japanische Klassiker mit Furigana
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ひがんすぎまで
彼岸過迄
Lesen Sie 彼岸過迄 (ひがんすぎまで) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 195.333 Zeichen · 385 Bildschirme
十一
今八十六の御婆さんの頭を剃っとるところだすよって。――御婆さんじっとしていなはれや、もう少しだけれ。――よう剃ったけれ毛は一本もありゃせんよって、何も恐ろしい事ありゃへん』と云いました。椅子に腰をかけた御婆さんは頭を撫でて『大きに』と礼を述べました。友人は僕を顧みて野趣があると笑いました。僕も笑いました。ただ笑っただけではありません。百年も昔の人に生れたような暢気した心持がしました。僕はこういう心持を御土産に東京へ持って帰りたいと思います」
僕も市蔵がこういう心持を、姉へ御土産として持って来てくれればいいがと思った。
十一
次のは明石から来たもので、前に比べると多少複雑なだけに、市蔵の性格をより鮮やかに現わしている。
「今夜ここに来ました。月が出て庭は明らかですが、僕の部屋は影になってかえって暗い心持がします。飯を食って煙草を呑んで海の方を眺めていると、――海はつい庭先にあるのです。漣さえ打たない静かな晩だから、河縁とも池の端とも片のつかない渚の景色なんですが、そこへ涼み船が一艘流れて来ました。その船の形好は夜でよく分らなかったけれども、幅の広い底の平たい、どうしても海に浮ぶものとは思えない穏やかな形を具えていました。