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Japanische Klassiker mit Furigana

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ひがんすぎまで

彼岸過迄

夏目 漱石

Lesen Sie 彼岸過迄 (ひがんすぎまで) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 195.333 Zeichen · 385 Bildschirme

Aozora Bunko

細君の姿はどこにも見えなかった。敬太郎が梯子段の中途で、及び腰をして、硝子越に障子の中を覗いていると、主人の頭の上で忽然呼鈴が烈しく鳴り出した。主人は仰向いて番号を見ながら、おい誰かいないかねと次の間へ声をかけた。敬太郎はまたそろそろ三階の自分の室へ帰って来た。

彼はわざわざ戸棚を開けて、行李の上に投げ出してあるセルの袴を取り出した。彼はそれを穿くとき、腰板を後に引き摺って、室の中を歩き廻った。それから足袋を脱いで、靴下に更えた。これだけ身装を改めた上、彼はまた三階を下りた。居間を覗くと細君の姿は依然として見えなかった。下女もそこらにはいなかった。呼鈴も今度は鳴らなかった。家中ひっそり閑としていた。ただ主人だけは前の通り大きな丸火鉢に靠れて、上り口の方を向いたなりじっと坐っていた。敬太郎は段々を下まで降り切らない先に、高い所から斜に主人の丸くなった背中を見て、これはまだ都合が悪いと考えたが、ついに思い切って上り口へ出た。主人は案の上、「御出かけで」と挨拶した。そうして例の通り下女を呼んで下駄箱にしまってある履物を出させようとした。敬太郎は主人一人の眼を掠すめるのにさえ苦心していたところだから、この上下女に出られては敵わないと思って、いや宜しいと云いながら、自分で下駄箱の垂を上げて、早速靴を取りおろした。