Japanische Klassiker mit Furigana
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ひがんすぎまで
彼岸過迄
Lesen Sie 彼岸過迄 (ひがんすぎまで) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 195.333 Zeichen · 385 Bildschirme
彼はこの時たちまち森本の二字を思い浮かべた。するとその二字の周囲にある空想が妙に色を変えた。彼は物好にも自ら進んでこの後ろ暗い奇人に握手を求めた結果として、もう少しでとんだ迷惑を蒙むるところであった。幸いに下宿の主人が自分の人格を信じたからいいようなものの、疑ぐろうとすればどこまでも疑ぐられ得る場合なのだから、主人の態度いかんに依っては警察ぐらいへ行かなければならなかったのかも知れない。と、こう考えると、彼の空中に編み上げる勝手な浪漫が急に温味を失って、醜くい想像からでき上った雲の峰同様に、意味もなく崩れてしまった。けれどもその奥に口髭をだらしなく垂らした二重瞼の瘠ぎすの森本の顔だけは粘り強く残っていた。彼はその顔を愛したいような、侮りたいような、また憐みたいような心持になった。そうしてこの凡庸な顔の後に解すべからざる怪しい物がぼんやり立っているように思った。そうして彼が記念にくれると云った妙な洋杖を聯想した。
この洋杖は竹の根の方を曲げて柄にした極めて単簡のものだが、ただ蛇を彫ってあるところが普通の杖と違っていた。もっとも輸出向によく見るように蛇の身をぐるぐる竹に巻きつけた毒々しいものではなく、彫ってあるのはただ頭だけで、その頭が口を開けて何か呑みかけているところを握にしたものであった。