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Japanische Klassiker mit Furigana

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あらじょたい

日本の文学 9 徳田秋声(一)

徳田 秋声

Lesen Sie 日本の文学 9 徳田秋声(一) (あらじょたい) von 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 346.393 Zeichen · 692 Bildschirme

Aozora Bunko

七十六

笹村のそう言うたびに、お銀は聴かない振りをしていた。

子供が電車通りで逢ったという男のことを、笹村はちょいと考えがつかなかった。

「どんな人……。」と言って、知っている人の名を挙げてみたが、やっぱり解らなかった。

「その人がね、お父さんのことを言っていたよ。」

子供はうつむきながら言った。

その男が磯谷であったことが、じきお銀の話で知れた。

「まるで本郷座のようでしたよ。私ほんとうに悪かった。これから妹と思って何かのおりには力になるからなんて、そう言って……。」と、お銀はその時の様子を笑いながら話した。

七十六

夏の初めに、何や彼やこだわりの多い家から逃れ、ある静かな田舎の町の旅籠屋の一室に閉じ籠った時の笹村の心持は、以前友達から頼まれた仕事を持って、そこへ来た時とはまるで変っていた。

その町は、日光へも近く、塩原へもわずか五時間たらずで行けるような場所であったが、町それ自身には、旅客の足を留める何物もなかった。家を飛び出した時の笹村は、そこの退屈さを考えている遑もないほど混乱しきっていた。それに適当な場所へ行くような用意ももとよりなかった。笹村は何かなし家と人から逃れて、そんなに東京からの旅客に慣らされていないような土地へ落ち着いて、静かに何かを考え窮めて見たかった。