Japanische Klassiker mit Furigana
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あらじょたい
日本の文学 9 徳田秋声(一)
徳田 秋声
Lesen Sie 日本の文学 9 徳田秋声(一) (あらじょたい) von 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 346.393 Zeichen · 692 Bildschirme
三十四
口の利き方もいつものような明晰を欠いていた。病勢のおそろしく増進して来た先生の内部には、生きようとする苦しい努力、はかない悶えがあった。日ごとに反抗の力の弱って行く先生は、笹村の苦しい事情に耳を傾けるどころではなかった。
「己もまだ先方から受け取らんのだから……。」と先生はしぶしぶ傍にあった鞄から、札を幾枚か取り出して笹村に渡した。そんな鞄を控えているということは、先生のこれまでには見られない図であった。
笹村は疚しいような気がした。原稿の出来るのと、先生の死と――いずれが先になるか、それは笹村にも解っていなかった。
三十四
とにかく下宿を引き払って来た笹村は、また旧の四畳半へ机を据えることになった。近所にはその一ト夏のあいだに、人が大分殖えていた。正一と前後して産れたような子供を抱いて、晩方門に立っている内儀さんの姿も、ちらほら笹村の目についた。お銀がよくつれて来て、菓子をくれたり御飯を食べさしたりして懐けていた四ツばかりの可愛い男の子も、しばらく見ぬまに大分大きくなっていた。その子は近所のある有福な棟梁の家の実の姉弟なかに産れたのだという話であった。