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Japanische Klassiker mit Furigana

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あらじょたい

日本の文学 9 徳田秋声(一)

徳田 秋声

Lesen Sie 日本の文学 9 徳田秋声(一) (あらじょたい) von 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 346.393 Zeichen · 692 Bildschirme

Aozora Bunko

七十八

笹村は朝九時ごろに起きると、大抵風呂の沸く午後の三、四時ごろまでは、じッと机の側に坐りきりであった。他の部屋とかけ離れたその座敷へは、何の音響も伝わっていなかった。時とすると広い寂れた通りで、子供を集めているよかよか飴の太鼓の音が、沈澱したような四辺の寂寞を掻き乱して行くほかは、例の小禽の囀りが耳につくだけであった。すべての感覚を絶たれたような笹村の頭は、どうかすると真空のように白けきっていた。

笹村は喫しつづけの莨に舌がいらいらして来ると、ふと机に向き直って何か書こうとして紙を見つめることもあったが、頭はやッぱり疲れていた。

空の晴れた日には、男体山などの姿が窓からはっきり眺められた。社の森、日光の町まで続いた杉並木なども、目前に黝んで見えた。大谷川の河原も、後の高窓から見られたが、笹村はどこを見ても沈黙の壁に向っているようであった。

家のことが、時々目前に浮んだ。向き合っている時には見られなかったお銀の心持や運命も、こうして遠く離れていると、はっきり解るように思えた。肉体とともに、若い心の摺りへらされて行くお銀の胸には、まだ時々恋愛の夢が振り顧られた。