Japanische Klassiker mit Furigana
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まつのやろはち
松のや露八
吉川 英治
Lesen Sie 松のや露八 (まつのやろはち) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 125.597 Zeichen · 253 Bildschirme
「ご苦労様でございます」
と、日常の挨拶みたいに云った。
桂もまた平然としていた。
侍と、坊主と、女と、こう三人の乗っている船を、台場兵たちは、不審そうにじろじろ眺めて、
「どこの船じゃ」
「川崎の森田家でございます」
提灯を水際へさげて、舳の船鑑札を検めると、すぐ呶鳴った。
「ちがう! 柳橋の浜中屋ではないか」
「はい」
お菊ちゃんは澄ましこんで、
「一昨日から、お客様方が、私どもへお遊びに来ていらっしゃいますから、船は、あちら様のでございます」
「ふーむ……。この騒がしいご時勢に」
外れた眼は、桂小五郎の横顔へ移った。すこし改まって、
「其許は?」
「拙者か」
「左様」
「江戸表にご逗留中の大原勅使の従臣、三沢蔵人でござるが」
「あ」
台場兵たちは、銃口を惑わせて、明らかに、狼狽した。隊長らしい男も、勅使の従臣と聞いて、ちょっと、荷が過ぎた顔いろをしたが、職権は崩さなかった。
「役目でござれば――一応お訊ねする。川崎の森田家にご気散じの由はわかったが、この深夜に、どこへ、そして何のために?」
たたみかけると、
「江戸川尻へ、千鳥聴きに」
「千鳥を」
「されば」
「千鳥を聴くとはどうすることか」