Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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まつのやろはち

松のや露八

吉川 英治

Lesen Sie 松のや露八 (まつのやろはち) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 125.597 Zeichen · 253 Bildschirme

Aozora Bunko

馬のいない厩

一

逃げる脚すら、がくがくとして、顫えがやまなかった。

馬のいない厩

一

先代の新十郎――つまり土肥庄次郎には祖父にあたる――槍の新十郎といわれた人は、大坪流の槍法の達人で、大酒家の上に豪放不羈な性格だった。そのために、一ツ橋家の指南番までゆきながら、たびたび御前ていをしくじっては、禁酒と謹慎とを、生涯に何度となく繰り返して終わっている。

「祖父を見習うてはいかぬぞ」

それを、子弟の訓戒にしているのが、今の当主半蔵で、

「あんな大酒を召しあがらなければ、ずいぶん、ご出世もし、家禄も百石にはなっていたろうに」

と、五人の子女の教育費に貧乏している最中は、よく愚痴をこぼしたものである。

三人の女子は、それぞれ嫁いで、今、家に残っているのは、長男の庄次郎と、次男八十三郎の二人きりだった。半蔵の妻は早世して、彼の齢も、早や五十幾歳かのはずである。二十五年来、近習番頭取を勤めて、一度の失策もなく、七十石に足らない糊扶持のうちから、わずかずつを割いて、付近の茗荷畑を買って家作を建てたり、藩士の内職の才取をしたり、小金を貸したりして、営々と理財につとめ、とにかく、

「土肥は、小金を持っている」