Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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まつのやろはち

松のや露八

吉川 英治

Lesen Sie 松のや露八 (まつのやろはち) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 125.597 Zeichen · 253 Bildschirme

Aozora Bunko

笛のお菊ちゃん

一

嘆いたとて、どうなるものぞい。おぬし、金は蓄めたじゃないか。金が、老いの杖。これからは隠居して、花鳥風月を友として喃……。それも、いいぞよ」

「金。金などが――」

いまさら、口惜しげに、橋板をふみ鳴らして、過ぎた人生を鉄之丞のせいみたいに罵った。

「金など、誰にでも、くれてやるわい。金が、何になる! ええ、たわけているわいっ!」

笛のお菊ちゃん

一

堀のお喜代の隣家は、炭屋だった。炭屋の二階に、このごろ、お喜代の世話で、坊主頭の大男が間借りして、がらにも似あわない「荻江露八」という小さな看板を打ちつけていた。

だが、弟子入りはないとみえて、露八は、筆耕仕事をしたり、黄表紙ものの戯作などを書いていた。飽きると、ぽかんと、指の筆を頬杖にやり、窓の机から今戸橋をながめている。

「お師匠さん、いますか」

「お喜代さんか。お師匠さんは恐れ入るな。荻江露八と名乗ったものの、お前さんの受け売りだからな、呼び方が、逆さまだ」

「私よりは、姉さんの方でしょう。あなたの先生は」

「もう、お蔦のことは、云ってくれるな」

「そんなに、嫌いになったのですか」

「好きで好きでたまらない、嫌いで嫌いでたまらない。