Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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まつのやろはち

松のや露八

吉川 英治

Lesen Sie 松のや露八 (まつのやろはち) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 125.597 Zeichen · 253 Bildschirme

Aozora Bunko

二

「忙しいんでしょう」

「弱っているのさ」

「じゃ、また来ましょう」

ぷいと、露八は、迅い足で、本堂を降りて草履をはいてしまった。

二

呆っ気にとられた顔をして、渋沢は、廻廊から、

「いいじゃないか、君」

「でも」

「せっかく、訪ねてくれたのに。……忙しそうにして、追い立てたようだが、気にしてくれるな」

「なあに、そんなことはない。こっちは、閑人だ」

「じつは、恩人の平岡円四郎殿が、志士たちの誤解をうけて、暗殺されたり、そのため、後の事務の処理を、藩から頼まれたりしているものだから」

「へエ。平岡さんも、殺されましたか」

「どうも、ちと、勤王派もやりすぎる。……俺も一ツ橋家の手伝いなどしているから、狙われているかも知れん。……しかし、慶喜公の知遇や、恩人の死や、いろいろ義理ずくめの事情で、近いうちに、正式に、藩へお召抱えになることに決まった。幕臣になったから皇室へご奉公ができんという理屈はないから、おひきうけ申したよ。……君も、藩へ帰ってはどうだな」

「ありがと」

「また、来てくれ。八十三郎君のことなら、どんな骨でも折る」

鳩が、足の先から立つ。露八は、見すぼらしい自分の背を見送る渋沢の眼を感じながら、薬師の外へ出た。