Japanische Klassiker mit Furigana
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まつのやろはち
松のや露八
吉川 英治
Lesen Sie 松のや露八 (まつのやろはち) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 125.597 Zeichen · 253 Bildschirme
二
これは、台場隊の見付には解せなかった。桂は、笑いながら、
「鼻が、香を嗅ぐようなものでござる」
と返辞をした。
分かったのか、分からないのか、
「ふム、なるほど」
それから、ひそひそささやき合っていたが、やがて、
「灯を点けて行かんと、巡邏船から、発砲されても、苦情は受けつけぬぞ」
注意して、どこかへ、漕ぎ去ってしまった。
二
いつ別れたのか、斧四郎旦那や芸妓たちの船は見えないし、帰る方角も妙だし、また、お菊ちゃんが巡邏船に答えた返辞も不審なので、露八は、にわかに、疑い出した。
「何だか、狐に憑まれているようだ。はてな? ……」
「海に狐はいないでしょう」
「一体、この船は、どこへ向かって行くのだい」
「帰るのですよ」
「柳橋へか」
「黙っていらっしゃい」
お菊ちゃんは、笑っている。
六郷の川口が右に見えた。羽田の洲を越した。
も少ししたら夜が明けよう。
すると、ようやく、船頭は船を鶴見川の近くの岸に寄せた。お菊ちゃんは船頭に、多分な口止め料をお捻紙にしてやった。
桂はいつの間にか脚絆をつけ草鞋をつけている、隙のない旅支度を急ぐのだった。そして、お菊ちゃんへ、懇々と礼をのべ、また、しばらくの別れを惜しみあうのだった。