Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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まつのやろはち

松のや露八

吉川 英治

Lesen Sie 松のや露八 (まつのやろはち) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 125.597 Zeichen · 253 Bildschirme

Aozora Bunko

三

すると、外で、がちゃがちゃと銃の音や、跫音がして、倉の前に、一かたまり立ちどまった。

「この中じゃろう」

奇兵隊の将か、本藩の侍か、権式のたかい声がして、次に云った。

「開けて、探してみろ」

三

錠前がひびく。厚い扉が開く。その途端にすぐ奇兵隊の隊士が、どやどやと、上がってきた。

そこに、露八がいることなどは、一匹のこおろぎとも彼らの眼には見えないらしい。

「ない」

「ない――」

しきりと呟きながら、荷梱を片っ端からひっくりかえしたり、倉の天井を仰いだりして、結局、外へ向かって、

「ありません!」

と、報告した。部将らしいのが、

「ないはずはないっ」

頑固に云って、

「藩船のお旗箱を、仕舞い忘れるやつがあるかっ。責任者は誰だっ」

「当然、船の者です」

「船の者は分かッとる! じゃが、その藩船から、当隊に預けたというではないかっ。預かった者は、誰かっ」

「わかりません」

「わからん? ――こらっ――」

業を煮やしたように、

「貴様ら、あの日、おらんのじゃったか」

「いました」

「おったら、わいらも、責任があるではないかっ。馬鹿者、腹を切れっ」

「…………」

「切れっ。――お旗箱のわかるまで、そこを、出ること相ならん!」