Japanische Klassiker mit Furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme
絶望的な息をついて、なおもお蝶の腕をだきしめる。
お蝶はヨハンの無性に泣く涙が、自分の腕にこすられるのをこそばゆく感じながら、妙に血が下がってきました。
「お蝶さま、お蝶さま」
「え……」
ヨハンの改まった言葉に、身をうごかそうとしましても、まだ苦しい手を放してはくれません。
「おわびいたしますお蝶様。二官殿は自殺したのでございましょう。それは私が殺したのも同然です。あの方の本性を疑っていたのはこのヨハンのあやまりでした」
まったく、昼のヨハンとは話がちがって、お蝶も奇異な思いが、いつやら身にしみてくる。
「深いあやまりでした。私は、どこまでもあの方を、日本へ帰化した今井二官、ころびばてれんと憎みました。そして疑ッてまいりました。しかし、実をいうと故郷の羅馬では、私の親が、代々つかえてきた御主人の家筋なのです」
「だれが」
「二官殿です」
「えッ、おまえは、私のお父さんの家筋に、代々つかえてきた家来だッて?」
「はい、あの方こそ、今は夜光の短刀がないために、家名はつぶれ、貴族の籍もはぎとられて、それを探しに日本へ流浪なされましたが、まことは、羅馬のさる王家を再興なさらなければならない、たッた一人のお血筋であッたのです」