Japanische Klassiker mit Furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme
小仏越え
そういって、あとは無口になりました。
馬の背にあるお粂の心には、いつか月江と金吾のことが胸苦しく考えられているふうです。
小仏越え
拝島の丘のすそに、旗本でも住みそうな、古めかしい一構えの屋敷がある。
野心家でそして野人的な、郷士の関久米之丞の住居がそれです。――そこは武蔵野の西端で立川の流れを越えれば八王子の宿に遠くありません。
「久米之丞殿。……お留守ですか。久米之丞殿」
門の跡はあるが門の扉はない。塀の面影はあるが塀の堺は雑草で埋まっています。その関の屋敷のなかへ、今こういいながら玄関をのぞいて裏へ廻ったひとりの男がある。
元より門番とか用人とかいう使用人も家族もない屋敷なので、男はずかずかと裏庭へ廻って行って、
「お留守でござるか、久米之丞殿、関殿」
と、繰返してキョロキョロしている。
――と、やっとその声を聞きつけたらしく、久米之丞の姿が庭の奥で、
「やあ」
と、いいながら鍬を持ってのび上がりました。
「やあ」
と、こっちも同じ言葉を返して、
「そんな所においでになったのか、何をしておられるので?」
と遠慮なく寄って行く様子です。
男は狛家に仕える高麗村郷士のひとりで、三日にあげず、御隠家様の御機嫌取りと、月江の顔を見に通うのを怠らない久米之丞とは、元より隔てのない懇意であります。