Japanische Klassiker mit Furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme
宿怨情恨
自己の気もちは分らないのではありますまいか。
とにかく、この瞬間だけでは、深くかれの心理に立ち入ることができない。ただ不可解です、魔がさしたようです、しばらくはかれの行動を見ているほかにありますまい。
――見ていれば相良金吾はなおもそれから走りに走りつづけ、小田原の宿へつづく根府川七里の街道をさながら韋駄天の姿で急いでおります。
宿怨情恨
はるか南に、走り湯権現の常明燈が一点、西の方には根府川女関所の灯がポチッと暗の空に見えていて、そこへはどッちも二里ほどずつ離れているさびしい漁村。
まばらな家数はみな寝しずまっていました。
そして漁船の柱にかけた網の目に、晩春にしてはめずらしく冴えた月が研がれています。
ぽウッと白い煙がうすく濃く海風にあおられました――千鳥ヶ浜の波うち際に。
そこで火を焚こうとしている男ふたりの影が見出されて、
「寒い……」とつぶやきながら、
「潮風にあっちゃたまらねえ、肌着の襟までジメジメとして来た」
「何しろ、もうすこし焚きつけがなくッちゃあ困る。オ、そのうしろに舟板がある」
「こりゃ漁師の渡世道具、こいつを焚き物にされちゃ、さだめしあとで困るだろうが」