Japanische Klassiker mit Furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme
「そうかい、世間様は、有難えもんだな」
と、稲吉が、何の気もなくいったことば、日本左衛門の黙りこんでいる心の底を、擽ぐるように苦笑させました。
やがて、そこへ来た酒を、真似ばかりに飲みながら、
「稲」
「へい」
「お粂はおめえの持ちだったな」
「そうです。あっしが籤を引きました」
「いい籤を引いたな。雲霧の相手や、おめえの目ざすものは、いつでも手の届くところにぶら下がッているのに、おれの引き当てた切支丹屋敷のお蝶ばかりは、どうしても、影もかたちも見せてくれねえ……」
と、含んだ酒も苦そうに、それには、よほど探しくたびれた様子であります。
彼をはじめとして、暗殺の籖を抽いて別れ別れになった五ツ組の者は、その後、各※(二の字点、1-2-22)目ざす方角へ向って、みな相応な飛躍をやっているだろうと思われる。
しかるに、その根幹である自分の持ちのお蝶の姿と来ては、いくら探りの手を分けてみても、一向見当がついて来ないので、日本左衛門も手を下しようがなく、夜光の短刀の手懸りと共に、あれ以来の日は空しく過ぎておりました。
嵐粂吉となったお粂は、すぐ目の前の小屋に、おおびらで姿を見せつけている。