Japanische Klassiker mit Furigana
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せいしゅんのぎゃくせつ
青春の逆説
織田 作之助
Lesen Sie 青春の逆説 (せいしゅんのぎゃくせつ) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.593 Zeichen · 325 Bildschirme
顔を見知らぬ三高生が一人擦れ違ったので、済まんけど、一銭貸してくれへんかと頼むと、妙な顔をして、無いぞオと断られた。わいはなんでこないに金が無いのやろ、泣いてこましたろかと、半分泣きかけていたのであった。――会いたいときはなかなか知った顔に会わんもんやなと、その時のことを想い出していると、急にホットケーキが食べたくなった。京極の真中で、財布をあけて勘定してみたら三十銭あった。「スター」へはいってホットケーキを食べた。そこを出て、京極通を三条へ出て、河原町通を四条の方へ引きかえした。四条河原町の手前にある小路を左へ折れて、「ヴィクター」喫茶店へはいった。薄暗いいちばん奥のボックスに坐って、そこの八重ちゃんと呼ぶ女の顔をなんとなく見ていた。八重ちゃんはいつもエプロンの袖から白い腕をにゅっと出して、それが生々しく魅力があった。三人いる女のなかで、彼女がいちばん目立っていそいそと立ち働いているのは、つまりそれだけ綺麗だと自覚している証拠なんだと、赤井がいつか言っていたのを想い出した拍子に、赤井の痩せた、線の細い顔が泛んだ。早く金を持って行ってやらぬと、赤井のことやから、余計勘定が嵩むようなことになるやろと、丁度鳴り出したベエートーヴェンの第五交響楽を深刻な顔で聴いた。