Japanische Klassiker mit Furigana
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せいしゅんのぎゃくせつ
青春の逆説
織田 作之助
Lesen Sie 青春の逆説 (せいしゅんのぎゃくせつ) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.593 Zeichen · 325 Bildschirme
六
が、多鶴子はふと、さっき女中が変な眼付で豹一をうっとり眺めていたのを想い出した。それで、多鶴子はちょっと慰まった。
(この娘、嘘を言ってるわ。あの新聞記者に惚れてるのに、あんなことを言ってる! ……そうだ。あの新聞記者は丁度この娘が恋人になるのに適しいような男なんだわ!)多鶴子はそう思って、豹一をさげすむことにした。
(あんな男を相手に腹を立てるのは、いっそ恥しいことだわ!)
(つまり、あの男の相手は女中だけで結構)
自分の心に無理にそう言いきかす必要があるほど、豹一のことが頭にこびりついて離れなかったのである。
彼女は、このままで済ませぬと思った。だから、彼女は翌日豹一の社へ電話を掛けるという軽はずみなことを、全く思い掛けずやってしまったのである。
六
夕刊第一版の原稿〆切は正午だった。
昨夜の疲れですっかり寝すごしてしまった豹一が出社したのは、もう十一時近かった。豹一は尾行記の原稿を〆切時間に間に合わせるため、大急ぎで4Bの鉛筆を走らせていた。
鉛筆の芯が折れた。
「給仕! 鉛筆だ!」
普通の時なら、給仕に用事を吩咐たり出来なかったのだが、急いでいたから、先輩たちの口調を真似てそう呶鳴った。