Japanische Klassiker mit Furigana
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せいしゅんのぎゃくせつ
青春の逆説
織田 作之助
Lesen Sie 青春の逆説 (せいしゅんのぎゃくせつ) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.593 Zeichen · 325 Bildschirme
三
「よろしい。欲しいだけ取って下さい。なんなら月末に請求書を出してもらいましょうか」さすがに声は顫えていた。が、請求書という巧い言葉を思いついたので、豹一の興奮はいくらか静まった。
しかし安二郎は請求書ときいて、飛び上らんばかりに喜んでいた。こんなに簡単に、いざこざなしに話がつくと思っていなかったから、余り話がうますぎると、ちょっぴり不安に思ったぐらいだった。
「用談」が済むと、豹一はいつものように畳新聞社へ出勤する顔で、さっさと家を出た。夕方帰って来た豹一は、しかし昨日のままの失業者に過ぎなかった。
三
凍てついた道を寒風が吹き渡っていた。豹一は寒そうに身を縮めたしょんぼりした恰好で、街から街へ就職口を探して空しく、歩きまわっていた。
昭和十六年の常識からはちょっと考えられぬところだが、当時は、大学出の青年が生活に困って紙屑屋を開業したと、新聞に写真入りの、いわば失業時代だった。たとえば、ある日、
「社会部見習記者一名募集」、「応募者ハ本日午前九時履歴書ヲ携帯シテ本社受付マデ。鉛筆持参ノコト東洋新報」
そんな三行広告が新聞に出ている朝、豹一が定刻より一時間早く北浜三丁目の東洋新報の赤い煉瓦づくりのビルへ行ってみると、もうまるで何ごとか異変の起ったような人の群が一町も列を成して続いていた。