Japanische Klassiker mit Furigana
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せいしゅんのぎゃくせつ
青春の逆説
織田 作之助
Lesen Sie 青春の逆説 (せいしゅんのぎゃくせつ) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.593 Zeichen · 325 Bildschirme
「はあ」
「心斎橋の不二屋でお待ちしていますわ」
「はあ」
「すぐ来ていただけます?」
「はあ。不二屋ですね」豹一はびっしょり汗をかいていた。断り切れなかった。
いま、彼女のことを散々にこきおろした記事を書いたばかりではないか。豹一はすっかり恐縮していた。もともと彼女には反感をもっていた筈だった。ことに、土門の話をきいただけに一層その反感に油が注がれている筈だ。だから、むやみに恐縮するのは変な話だったが、その反感をすっかり文章に出してしまったいま、無理にその反感に頼ろうにも、効果は少かった。それに面と向っての話ではないだけに、いつもなら、その美しい顔から受ける冷たい感じに反感を覚えることもなかったわけだ。ひとつには、多鶴子の電話を通した声は例の重みのあるしわがれた響きがなく、案外に透き通った優しい響を伝えていたのである。
電話機を掛けると、豹一はオーバーをひっ掛けながら、社を飛び出した。
不二屋へはいって行くと、多鶴子はさきに来ていて、手袋をはめた指を一本あげて豹一に合図した。
「お呼び立てしまして……さあ、どうぞ!」多鶴子に言われて、豹一は、赧くなりながら、向いあった席に腰を下した。