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Japanische Klassiker mit Furigana

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せいしゅんのぎゃくせつ

青春の逆説

織田 作之助

Lesen Sie 青春の逆説 (せいしゅんのぎゃくせつ) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.593 Zeichen · 325 Bildschirme

Aozora Bunko

ところが、彼はちっとも嬉しくなかった。例の義務を想い出していたからである。

(なにかしなければならない!)そう思うのだが、しかし、なにをすれば良いのか見当がつかなかった。口説くというような考えは、頭をかすめもしなかった。いろいろ考えたあげく、いつか喫茶店でやったように、手を握るということを思いつくのが関の山だった。結局それを決行しようとだしぬけに、決心した。豹一はそわそわしだした。

が、丁度良い工合にその時多鶴子の手は空いていなかった。多鶴子はボーイがわざとむかずに持って来た林檎を手にとると、器用な手つきでそれをむきだしたのである。むろん豹一のためにだった。不器用な豹一は林檎ひとつようむかず、そんな多鶴子を見て、ふと心が温った。瞬間義務のことは忘れ、繊細な多鶴子の指の美しさにうっとりとした。

そんな夜が四五日続いた。その三日間なにひとつ「義務」に気に入るような行動は出さなかったために、豹一は些かうんざりしていたが、あるいはそれがかえって良かったのかも知れぬ。「義務」の命ずるままに乱暴に手を握ったりすればお互い不愉快なことこの上ない。全くのところ、豹一はいっぺんに愛相をつかされたところだったかも知れない。