Japanische Klassiker mit Furigana
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せいしゅんのぎゃくせつ
青春の逆説
織田 作之助
Lesen Sie 青春の逆説 (せいしゅんのぎゃくせつ) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.593 Zeichen · 325 Bildschirme
監督の教師は外していた眼鏡を掛けて覗き込んだ。
「白紙です」そして、わざと後も向かず、ざまあ見ろと胸を張って、教室を出た。はじめてほのぼのとした自尊心の満足があった。しかしその満足がもっと完全になるまで、もう三月掛った。翌年の三月、白紙の答案を補うに充分なほどの成績を取って進級するところを見せる必要があったのである。その三月は永かった。それだけに進級した時の喜びはじっと自分ひとりの胸に秘めて置けぬほどだった。気候も良かった。桜の花も咲き初めて、生温い風が吹くのである。豹一はまるで口笛でも鳴らしたい気持で、白紙の答案を想い出した。クラスの者は当分の間彼の声をきいてもぞっとした。なかには落第した者もいるのである。
そんな風だから豹一はもう完全にクラスの者から憎まれてしまった。しかし、彼の敵愾心は最初から彼等を敵と決めていたから、憎まれてかえってサバサバと落ち着いた。美貌に眼をつけた上級生が無気味な媚で近寄って来ると、かえってその愛情に報いる術を知らぬ奇妙な困惑に陥るのだった。
三年生の終り頃、ローマ字を書いた名を二つ並べ、同じ字を消して行くという恋占いが流行った。