Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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せいしゅんのぎゃくせつ

青春の逆説

織田 作之助

Lesen Sie 青春の逆説 (せいしゅんのぎゃくせつ) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.593 Zeichen · 325 Bildschirme

Aozora Bunko

豹一の頭髪が漸く七三にわけられるようになった頃、友子は男の子を産んだ。産気づいたことが、母親の声で新聞社へ電話された。

豹一は火事場に駈けつけるような恰好で、飛んで帰った。産婆が来ていた。

階下の台所を借りて湯をわかしていた母親は、豹一の顔を見るなり、

「はよ、二階へ行ったりイ。両方の肩をしっかり持ってたるんやぜ」と、言った。

豹一は友子の枕元に坐って、友子の肩を掴んだ。友子は、苦しそうに、うん、うん、うなっていたが、たまりかねたのか、豆絞の手拭をぎりぎりと噛み出した。

陣痛がはじまっていたのだ。友子の眼のふちは不気味なほど黝んでいた。豹一は、じっとそのあたりを見つめていた。

「さあ、もうちょっとの辛抱や。しっかり力みなはれや。聟さんもしっかり肩を抑えたりなはれや。もうちょっとや」

産婆の声をきいていると、豹一は友子の苦痛がじかに胸にふれて来て、もう顔を正視することが出来なかった。

(このまま死ぬのじゃないだろうか?)ふと、そんなことを想って、ぞっとした。

「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏!」

いつの間にあがって来たのか、母親が産婆の横にちょこんと座って、念仏を低く唱え、唱えしていた。