Japanische Klassiker mit Furigana
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へいけがに
伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集
岡本 綺堂
Lesen Sie 伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集 (へいけがに) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.094 Zeichen · 411 Bildschirme
本多は起きて縁側に出て行った。そうして、たしかに蟹がはいり込んだことを説明したので、四人の女たちはまた起ちあがって座敷の隅々を詮索すると、蟹は果たして発見された。かれは床の間の上に這いあがって、女学生の化粧道具を入れた小さいオペラバックの上にうずくまっていた。そのバックは児島亀江のものであった。蟹は本多の手につかまって、低い垣の外へ投り出された。
蟹の始末もまず片付いて、男三人は十時ごろに蚊帳にはいった。となり座敷もほとんど同時に寝鎮まった。宵のうちは涼しかったが、夜のふけるに連れてだんだんに蒸し暑くなって来たので、遠泉君はひと寝入りしたかと思うと眼がさめた。襟ににじむ汗を拭いて蒲団の上に腹這いながら煙草を吸っていると、となりに寝ていた本多も眼をあいた。
「いやに暑い晩だね。」と、彼は蚊帳越しに天井を仰ぎながら言った。「もう何時だろう。」
枕もとの懐中時計を見ると、今夜ももう午前二時に近かった。いよいよ蒸して来たので、遠泉君は手をのばして団扇を取ろうとする時に、となり座敷の障子がしずかにあいて、二人の女がそっと廊下へ出てゆくらしかった。遠泉君も本多も田宮の話をふと思い出して、たがいに顔を見あわせた。