Japanische Klassiker mit Furigana
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へいけがに
伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集
岡本 綺堂
Lesen Sie 伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集 (へいけがに) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.094 Zeichen · 411 Bildschirme
三
「異国のお人、わたしはこなたに頼みがある。どうぞわたしを送り戻してくだされ。」
「京へ戻らるるか。」と、男はしずかに言った。
「いや、京までは戻りませぬ。今も言うた采女の死に場所、その亡骸を埋めたところまで……。」
「戻ってなんとせられます。」
「戻って……ともかくも一度戻った上で……。」
「戻った上で。」と、男は鸚鵡返しに言った。「折角ここまで落ち延びましたに、再びもと来た路へ引っ返して、二度の追っ手に出逢うたらなんとなさる。采女殿の亡骸はわたくしが確かに埋めてまいりました。御懸念は無用じゃ。」
「でもあろうが、ともかくも……。」と、小坂部はせがむように言った。「采女に離れて、これから何処へ行きましょうぞ。」
「いや、ゆく先きはある。」
眇目の男は力強い声でおごそかに言った。
三
彼の声音も態度も俄かに変わって来たので、小坂部もおもわずその顔を瞰あげると、男の鋭い片眼の光りは、都の辻で初めてかれを見た時とおなじように爛々と燃えていた。その強い光りに瞳を射られて、小坂部は彼に対する一種の恐怖と尊敬の念がまた甦えって来た。
「お身のゆき先はほかにもある。」と、男はかさねて言った。