Japanische Klassiker mit Furigana
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へいけがに
伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集
岡本 綺堂
Lesen Sie 伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集 (へいけがに) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.094 Zeichen · 411 Bildschirme
二
なんとでも勝手に言わして置きゃれ。但しそなたは権右衛門がそれほどに怖ろしいか。」
「いや、怖ろしいよりも憎うござる。弓矢を取っては怖ろしい奴ではござりませぬが、佞弁利口の小才覚者、何事を巧もうも知れませぬ。」
「ほほ、何を巧む。謀叛かの。」
「それほどの大胆者ではござりませぬ。ただ懸念なはお前さまを……。」
「わたしを……。わたしに恋か。ほほほほほほ。」
小坂部は堪らないように肩をゆすって笑った。采女はそれに釣り出されて笑った。
「いや、それほどの愚か者でもござりませぬ。」
「なりゃ、わたしに恋するは愚か者か。もう一度たしかに言うて見やれ。」
「なにさま愚か者かも知れませぬ。」と、采女はまた笑った。
「おお、よう言うた。本庄采女という侍を、あたら愚か者にしてのけたはわたしの罪じゃ。ゆるしてくりゃれ。」
憤るように言い捨てて、小坂部はわざと足早にあるき出した。京の町の秋の灯はもう眼のさきに黄いろくまばらに見えた。
二
「姫はどうなされたぞ。殿はいこうおむずかりじゃに……。」
四十に近い古女房が鉄漿ぐろの口をゆがめて、暗い庭さきを眺めていた。かれは侍従といって、むかしは然るべき殿上人につかえていたが、今は世と共に衰えて、わずかに武家に身をよせて朝夕を送っているのであった。